いよいよ教習所デビューを果たした、ピカピカの40代の私。見た目はさておき、免許取得に挑むフレッシュな気持ちは娘息子のような若者たちと一緒のはず。
まずは学科からのスタートですが、土日だからか教室は若者たちであふれ、さながら大学の講義のよう。
教室に入ると、みんな一斉に私を見ます。「違いますよ。私は教官じゃないですよ。」というオーラをかもしだし、ササッと席に座ります。
40代でガリ勉になる
子供が小学生になって時間に余裕もできたとはいえ、ワンオペ育児とフルタイム勤務に変わりはなく、土日のさらに限定的な時間にしか入れません。
ロビーでゆったりキャンセル待ちをしている余裕などないので、土日に優先的に予約をガンガン入れられるオプションに入ることに。さらなる出費ですが、確実にできるだけ短期間に免許をとるためには仕方がありません。
とにかく、莫大なお金を教習所に落としていて、これ以上は1円たりとも出せない。なにがなんでも全部一発合格で通らなければ、という覚悟で教習所に通う私。
学科への熱意も半端じゃありません。教官の教えを一言一句聞き逃すまいと、テキストに書き込んだり、マーカーしたり。
「え~?学科なんて私ずっと寝てたかも~ペン?何か書いた記憶すらないかも~そんなのしなくても学科なんて大丈夫だよ~」となんの参考にもならないアドバイスをしてくれた会社の先輩の言葉はとりあえず無視です。
フレッシュな気持ちは一緒でも、脳は確実に衰えています。同じような心構えで全て一発合格を狙えるわけありません。
教習所の学科でこんなに勉強してるのって私だけかも?とそんな必死な自分がだんだん面白くて笑えてきて、なんだか楽しくなってきていました。
仕事のために何かを覚えたりといったことはもちろんありましたが、こういう資格のための勉強ってものすごく久しぶりだったので、新鮮に思えたのです。
こうして仮免の学科試験はなんなくクリアして、無事に第二段階へ。
このころには場違い感にもすっかり慣れて、「40代でも頑張ってますよ」と、場違い感を楽しめるように。たぶん、若者たちは最初から誰も何も思ってなかったでしょうけどね。ただの私の気持ちの問題です。
サンコンさんで注目を浴びる
普通に、目立たぬよう、淡々と学科をこなしていたある日のことです。視力の学科だったと思うのですが、鷹の視力はいくつでとかそういった動物の視力と人間の視力の違いをイラストを使って教官が説明していました。
「でも実はもっとすごいのがあるんです」と私より少し年下であろう男性教官がもったいつけながらスクリーンに映し出したのは、サンコンさん。
「サンコンさんはなんと人間界では考えられない視力6.0です!」教官、熱が入ります。
へ~知らなかった。周りをみると、みんなポカ~ン。ん?
シラ~とした雰囲気の中、この教官、まさかの暴挙にでました。
「あ、そうだよね、みんなサンコンさん知らない世代だよね。昔は日本で有名な人だったんだよ~。え~と、あ!〇〇さん(私の名前)は知ってますよね?サンコンさん!」
え?!なにそのむちゃぶり!サンコンさん知ってるかなんてどうでもよくない?!
一斉に私を見る若者たち。そうよね。誰も知らないサンコンさんを知ってる人って一体?!って思うよね。
「あ、はい知ってます。」
最低限の短いセンテンスでお返ししておきました。ずっとひっそりこっそりガリ勉してたのに、まさかサンコンさんでこんなにも注目を浴びることになろうとは。できればそっとしておいてほしかった・・・
そもそもサンコンさん知らない率の方が確実に多いの分かってるんだから「サンコンさんという人」でサラっと流せばいいのに。
実はこの教官、これだけでは終わりませんでした。その後のAEDの使い方の学科で、私を含む3人の生徒の指導教官がこの人でした。
「松村邦彦が東京マラソンで倒れたけどAEDで助かった」という話をしだして、ポカ~ンとなる若者2人に「あ、2人は松村邦彦知らない世代だよね。〇〇さん(私の名前)は知ってるよね?」とデジャブのようなフリ。あ、やっぱそうくる?
「知ってますよ!2人とも知らないんですね~いつのまにかそんな時代になってるんですね~」
なんという私の成長ぶり!もう昭和スターでもなんでもこい!という気分。
こうして、学科では無駄にゼネレーションギャップを感じさせられながらも、無事にすべての過程を終了することができました。